「ぼくサッカー選手になりたい」
なんの予兆もなく、唐突にそう言ってきた子がいました。5年目になるユナイテッドですが、自分の夢を、こんなにも真剣な眼差しで自分から語ってくれた子は、おそらく初めてです。
その子が語る夢に、言葉を失うほどの温かさを感じました。
夢を語れる「人」を育てよう
急に立ち止まり、話しはじめたその子の目は真剣で熱意を感じます。夢を語れるってすごいですね。夢を語る「人」の姿がこんなにも素敵だと感じたことが、今まであったでしょうか。
ほんとうに素敵な子どもの夢の話ですが、突如として風向きが変わることがあります…
今回は25年の間に出会った、いくつもの例を簡単にまとめてお話します。
夢の主役の座を奪う「親」
子どもが主役であるはずの夢が、いつの間にか親の夢に変わってしまうことがあります。それまで気にも留めず、期待もしていなかったはずなのに、少し上達した子を見て、こう考える親がいます。
「もっとやらせれば、もっとできる」
僕の経験上、この親の考えが動き出すと、止めるのが難しくなります。その考えは少しずつ熱を帯びて、もっと上達できるようにと様々な機会を与えていくようになります。
それまで夢の主役は子どもだったはずなのに、親がその座を奪い、子どもの夢の中に入り込んでコントロールするようになります。
燃え尽きた夢
夢の中に入り込んできた親に、主導権を奪われた子どもは、休まる時間の無い、詰め込むような日々がスタートします。
次第に子どもの自由な時間は減り、心と体が少しずつ、しかも着実に疲弊していきます。驚くことにこのことに気づく親は、ほとんどいません。
時間と期待に追い詰められる日々が続き、自分のものだったはずの夢が、誰かの夢に置き換わっていたことに気づいた子は、やがて夢を語らなくなっていきます。そして、子どもの成長は止まり、子どもの夢はとうとう燃え尽きてしまうことになります。
夢と才能はワンセット
「もっと」と考える前に、自分の思考に少しブレーキをかけてください。多くの親は、アクセルを踏み続けたことを後悔しています。見えない何かとたたかうために、我が子をコントロールすることが、本人のためだと信じ込んでいたことを悔やんでいます。
子どもはこれから、あなたにどんな才能を見せてくれるか分かりません。そして、もし才能の芽が出はじめたら、全力で子どもの夢を守ってあげてください。夢を守ってあげるためには、あなたの振る舞い方は重要な鍵になるでしょう。本来、子どもの夢は誰にもコントロールされるべきではないんです。夢と才能はワンセットにして、子どもの心の中にとどめておいてほしいと強く願います。
そんなに慌てなくても大丈夫です。もし許されるのであれば、10歳ぐらいまで、どっぷりと夢の中に居させてあげてください。あなたの子どもが現実を知るべき時はもっともっと先にあって、これから成長を続ける子ども自身が、いくつもの経験を通して多くのことを学んでいくはずです。
「ぼくサッカー選手になりたい」
夢へ向かう、子どものまっすぐな視線を守れるのは、あなただけかもしれません。