最近ヨーロッパから日本に帰国した、日本人サッカー選手があるインタビューで語った言葉。
「Jリーグのサッカーは世界のサッカーとは違う種目」
すごく勇気ある発言だと思う。しかも、重要なメッセージでもあると思う。
日本のサッカーをバカにするなって、思うかもだけど、僕もこの言葉に賛成かな。
でもね、賛成するんだけど、同時に強く否定もしたい。
今回は、僕がユースのコーチの時代に行った、オランダ遠征での経験を書くから読んでみて。

オランダ遠征
2001年、日本国内で力を発揮しはじめたユースチームが、オランダ遠征に行った時の物語(実話)。
どんな話かって?
メンタルもカラダも、そして夢もすべてボロボロになるぐらいに、やられた話し。
当時のオランダサッカーは、世界から注目を集めていて、アジア圏、なかでも日本では超ブームといっても良いほど。
オランダは日本の9分の1の大きさだけど、今でも世界中に有名選手を排出してる国でもあるんだ。
でね、対戦した相手はフェイエノールト、フィテッセ、ヴィレムⅡ、デン・ハーグ、アンデルレヒト、そしてアヤックス。
日本では負け無し状態のチームが、同年代のBチームにも、時には一つ下の年代の相手にも何も出来なかった。というより、何もさせてもらえなかったと言った方が正しい。
ボロ負け
グランパス 0-3 フェイエノールト
グランパス 1-3 フィテッセ
グランパス 0-2 ヴィレムⅡ
グランパス 0-4 デン・ハーグ
グランパス 1-3 アンデルレヒト(ベルギー)
グランパス ?-? アヤックス
数字だけを見れば、まぁまぁ頑張ったねって言えそうだけど、違うんだよね。
ただ負けただけじゃないんだ。ボロボロにされたんだよ。
本当の意味でのボロボロ状態。サッカーって一体何なんだろうって思える内容。
最初のフェイエノールトの試合後なんてさ、みんな体じゅう傷だらけ。何が起こってたのか分からないくらい、右へ左へ振りまわされ敗北。
それで、二日後のフィテッセ戦なんて、治りきってない傷の上に、さらに傷を重ねられるようなやられっぷり。ディフェンダーの選手なんて、試合後シャツ脱いだらアザだらけだったんだ。
フィテッセ戦で1点取れたことを喜びたいけど、この1点はフィテッセのU15の選手が出はじめた最後の時間。
ぶっちゃけ素直によろこべるわけないよね。
でさ、このいくつものボロ負けの試合を目の当たりにして、僕は思ったんだよ・・
「これ、違うスポーツだ」って。
やってること全然違うってね。
コーチとして何もできない上に、何もかもが違いすぎるって思って呆然となった。
そして、最後のアヤックス戦。世界でも育成年代でスーパー有名なクラブとの対戦。
どうなるか想像できる?

アヤックスユースBチーム
予定していたアヤックスユースAチームとの試合の当日、出てきたのはBチーム(約束していた相手が試合に来ないのは外国ではよくあること)。
Bチームといえども、世界屈指のユースチーム。身体のデカさはレベルが違うし、パスを回すスピードの差なんてのは、名鉄電車と新幹線。
試合開始直後から目が回るような速さで、ボールを回されて、なにもできないまま前半10分に失点。
ってことは、何点とられるの?って思うほどの試合内容。
何をやっても解決できない、何をやっても通用しない、どうやっても勝てない。そんな雰囲気。
情けない話しだけど、コーチとして何の解決策も見つけることができなかった。
でもね、ある一人の選手の、たった一つのプレーが、すべてを変えたんだよ。
日本人、覚醒
前半残り15分。ユースのキャプテンが、相手のエースに強烈なタックルでアヤックスの決定機を阻止。
クリーンで強烈なタックルに、相手選手もサポーターも沈黙。
オランダに来て、レベルの違いにショックを受け、ネガティブ発言ド連発中だったキャプテンが、最後の試合で覚醒した。
このワンプレーがすべてを変えた。
もしかしたら、僕のその後の人生にも大きな影響を与えてくれたプレーかもしれない。
マジで、めちゃかっこ良かったよ。
たぶん試合を見に来たオランダ人全員が、このプレーで思ったはず。
「日本人、やるじゃん」って。

ハーフタイム
「このまま日本に帰れんぞ。最後までボロボロじゃあ、日本をバカされるぞ。俺たちのサッカーはサッカーじゃないんだよ。きれいに上手くプレーしようとかじゃないんだって!俺たち戦ってないからやられまくってるんだって。ビビるな!もっと闘おうゼ!」
誰が言ったかわかるよね。
身も心もボロボロの、超ネガティブ発言連発中だったキャプテンが、とつぜんロッカールームで発した言葉。
ちょっと良くない言葉かもだけど、何もできてない自分にブチギレて、まわりにも吠えまくったんだ。
覚悟を決めた時の人の目って鋭いし、やっぱカッコいいね。
キャプテンが覚醒して、選手たちみんなが燃えた。
アニメで目の中の炎がメラメラ燃えるの見たことあるでしょ?僕はこのとき初めて見たよ。
選手たちの目を見て後半は「やれる」と思った。
後半すごかったぜ。マジで。
つづく